Storage Foundation 8.0.2 管理者ガイド - Linux
- 第 I 部 Storage Foundation の紹介
- Storage Foundation の概要
- Dynamic Multi-Pathing の動作
- Veritas Volume Manager の動作
- Veritas File System の動作
- 第 II 部 ストレージのプロビジョン
- 新しいストレージのプロビジョニング
- ストレージの設定のための高度な割り当て方法
- 割り当て動作のカスタマイズ
- 特定のレイアウトのボリュームの作成
- VxFS ファイルシステムの作成とマウント
- VxFS ファイルシステムの作成
- VxFS ファイルシステムのマウント
- ファイルシステムサイズの変更
- 空き領域の監視
- エクステント属性
- 第 III 部 DMP を使ったマルチパスの管理
- Dynamic Multi-Pathing の管理
- 新しく追加されたディスクデバイスの検出と設定
- ディスクの検出とディスクアレイの動的な追加について
- デバイス検出層の管理方法
- vxdmpadm ユーティリティを使った DMP の管理
- I/O 統計情報の収集と表示
- I/O ポリシーの指定
- 新しく追加されたディスクデバイスの検出と設定
- デバイスの動的再構成
- デバイスの管理
- イベント監視
- Dynamic Multi-Pathing の管理
- 第 IV 部 Storage Foundation の管理
- 第 V 部 I/O パフォーマンスの最適化
- 第 VI 部 PITC (Point-In-Time Copy) の使用
- PITC 方法の理解
- ボリュームスナップショットの管理
- 従来のサードミラーブレークオフスナップショット
- フルサイズインスタントスナップショット
- インスタントスナップショットの作成
- インスタントスナップの DCO と DCO ボリュームの追加
- インスタントスナップショットの同期の制御
- インスタントスナップショットの作成
- カスケードスナップショット
- バージョン 0 の DCO および DCO ボリュームの追加
- Storage Checkpoint の管理
- FileSnaps の管理
- スナップショットファイルシステムの管理
- 第 VII 部 Storage Foundation を使用したストレージの最適化
- 第 VIII 部 ストレージ利用率の最大化
- SmartTier によるストレージの階層化について
- ボリュームセットの作成と管理
- MVS ファイルシステム
- SmartTier の管理
- ホットリロケーションの管理
- データの重複排除
- ファイルの圧縮
- 第 IX 部 ストレージの管理と保護
- ボリュームとディスクグループの管理
- デフォルトのディスクグループの名前の付け方
- ボリュームまたはディスクの移動
- タスクの監視と制御
- オンライン再レイアウトの実行
- ボリュームへのミラーの追加
- ディスクグループの管理
- プレックスとサブディスクの管理
- ストレージの破棄
- ルータビリティ
- クォータ
- FCL (File Change Log)
- ランサムウェアに対する保護のサポート
- ボリュームとディスクグループの管理
- 第 X 部 参照先
SmartTier について
SmartTier は、データ使用上の必要条件に基づいてデータストレージの一致処理を行います。データの一致処理が終了すると、データの使用上の必要条件と、ストレージ管理者またはデータベース管理者(DBA)により定義された他の必要条件に応じてこのデータが再配置されます。
時間の経過とともに保持されるデータが増えるにつれ、一部のデータはしだいに使用頻度が低くなっていきます。使用頻度が低くても、データを保持するには多くのディスク領域が必要です。SmartTier を使うと、データベース管理者が、使用頻度の低いデータをより低速で安価なディスクに移動してデータを管理できるようになります。また、頻繁に利用されるデータをより高速のディスクに保持してすばやく検索できるようにすることも可能です。
ストレージの階層化は、複数のタイプのデータをさまざまなストレージに割り当てることで、パフォーマンスを高速化し、経費を削減する方法です。SmartTier では、ストレージクラスを使って、特定の層を構成するディスクを指定します。ストレージクラスを定義するには、一般的に 2 つの方法があります。
処理効率またはストレージが要求されるクラス: 最も使用頻度が高いクラスは、高速で高価なディスクです。定期的には必要とされなくなったデータは、低速で安価なディスクで構成される別のクラスに移動できます。
耐障害性を備えたクラス: 各クラスは、非ミラーボリューム、ミラーボリューム、n-way 型ミラーボリュームで構成されます。
たとえば、通常、データベースはデータ、インデックス、ログで構成されます。データは重要であるため、3 方向のミラーで設定できます。インデックスは重要ですが再作成が可能なため、2 方向のミラーで設定できます。REDO ログおよびアーカイブログを毎日採取する必要はありませんが、これらはデータベースリカバリに必須です。ミラー化することもお勧めします。
SmartTier は、作成したルールに従って異なるストレージ階層からファイルストレージ領域を割り当てることができる VxFS の機能です。 SmartTier では、現在より柔軟な方法で階層化されたストレージの管理を行うことができます。 ストレージの静的な階層化では、ストレージクラスへのアプリケーションファイルの割り当てを手動で 1 回のみ行いますが、これは長期的に見ると柔軟性に欠けます。 通常、階層型ストレージ管理のソリューションでは、アプリケーションのアクセス要求に対する処理を実行する前に、ファイルをファイルシステムの名前空間に戻す必要があり、その結果として遅延とランタイムのオーバーヘッドが発生します。 一方、SmartTier では、以下のことが可能です。
時間とともにファイルの価値が変わると、最適なストレージ階層にファイルを動的に移動することで、ストレージ資産を最適化します。
ユーザーまたはアプリケーションのファイルアクセス方法を変更せずに、ストレージ階層間のデータの移動を自動化します。
管理者が設定したポリシーに基づいてデータを自動的に移行します。これにより、階層化されたストレージに対する操作要件や、データの移動に関連するダウンタイムが不要になります。
メモ:
SmartTier は、以前に Dynamic Storage Tiering(DST)と呼ばれていた機能を拡張し、名前を変更したものです。
SmartTier のポリシーでは、初期のファイルの場所と、既存ファイルが再配置される環境を制御します。これらのポリシーをファイルに適用すると、ファイルシステムのボリュームセットの特定のサブセット(配置クラスと呼ばれる)上でそのファイルを作成し、拡張できます。ファイルは、指定した名前、タイミング、アクセス率、ストレージ容量に関連した条件に一致すると、他の配置クラス内のボリュームに再配置されます。
事前設定ポリシーに加え、必要に応じて、SmartTier で高速または低速のストレージにファイルを手動で移動できます。また、有効なポリシーの一覧表示、ファイル状態の表示、ボリュームの使用状況の表示、ファイルの統計情報の表示などを行うレポートを実行できます。
SmartTier では、Storage Foundation に搭載される 2 つの主要なテクノロジを利用しています。1 つは MVS ファイルシステムです。もう 1 つはファイルシステムで管理されるストレージ内でのポリシーに基づくファイルの自動配置です。 MVS ファイルシステムは、2 つ以上の仮想ストレージボリュームを占有するので、単一のファイルシステムを異機種混在の可能性もある複数の物理ストレージデバイスにまたがるようにすることが可能になります。 たとえば、1 つ目のボリュームが EMC Symmetrix DMX のスピンドルに存在し、2 つ目のボリュームが EMC CLARiiON のスピンドルに存在するということも可能です。 単一の名前空間を提供することで、ユーザーとアプリケーションは複数のボリュームを透過的に認識します。 この MVS ファイルシステムでは各ボリュームが識別されるので、個々のファイルが格納されている場所を制御することが可能です。 MVS ファイルシステムをポリシーに基づくファイルの自動配置と組み合わせることで、アプリケーションにもユーザーにもダウンタイムの影響を与えずにデータを自動的に移動する理想的なストレージ階層化機能を実現できます。
データベース環境では、アクセス期間のルールを一部のファイルに適用できます。 ただし、たとえばデータファイルによっては、アクセスされるたびに更新されて、アクセス期間のルールを使用できない場合もあります。 SmartTier には、ファイル全体だけでなくファイルの一部をセカンダリ階層に再配置する機構も用意されています。
SmartTier を使うには、次の機能でストレージを管理している必要があります。
VxFS MVS ファイルシステム
VxVM ボリュームセット
ボリュームタグ
ファイルレベルの SmartTier 管理
サブファイルレベルの SmartTier 管理